2019.05.29 14:45正義 ジャーナリズムの無定見、軽薄さ ジャーナリズムの半文化的性格、無教養は甚だしい ジャーナリズムの断定態度というものには、知的性格がまったく欠如しているのである 軽率であり、感情的であり、合理性を欠いている その非知性的なること、論断の軽薄なること、まことに、呆れ果てたる有様である 人食い事件を創作したのも、新聞ではないか 水戸の容疑者を騒ぎたてたのも、新聞ではないか 太宰情死を社会問題として騒ぎたてたのも、新聞ではないか 一方に自分で騒ぎたてながら、同じ新聞の論説めいた欄で、 文士の情死など騒ぎたてる世相は苦々しいなどと、 自分でやっておきながら、責任を人に押しつけているのである どこに良心があるのであるか 新聞以外の他のいかなる職業に於ても、 一...
2019.05.20 06:37自信 自信というものは、自分でつくるものではなくて、人がつくってくれるものだ。 他人が認めることによって、自分の実力を発見しうるものである。 このように発見せられた実力のみが自信であり、 野心児の狙いやウヌボレの如きは何物でもない。 信長には持って生れた野育ちの途方もないウヌボレがあった。 それと同量の不安があった。 このウヌボレをまことの自信に変えるためには、 不安と同量の、他人による、最高、絶対の認められ方が必要であった。 坂口安吾著『織田信長』( 筑摩書房「坂口安吾全集 第07巻」) より 適宜抜粋、省略を施し、レイアウトを変更しています。
2019.05.16 04:04芸道 芸道というものは、その道に殉ずるバカにならないと、大成しないものである。 文化の高まるにしたがって、人間は迷信的になるものだ、ということを 皆さんは理解されるであろうか。 角力トリのある人々は目に一丁字もないかも知れぬが、彼らは、否、 すぐれた力士は高度の文化人である。 なぜなら、角力の技術に通達し、技術によって時代に通じているからだ。 角力技の深奥に通じる彼らは、時代の最も高度の技術専門家の一人であり、 文化人でもあるのである。目に一丁字もないことは問題ではない。 高度の文化人、複雑な心理家は、きわめて迷信に通じ易い崖を歩いているものだ。 自力のあらゆる検討のあげく、限度と絶望を知っているから。 すぐれた魂ほど、大きく悩む。大きく、もだえる。 大力...